闇に響く籠の歌
「そのうちの一つは今の都市伝説ともいえそうなかごめの歌、ですよね。親父さんが簡単に言ったように何かの事情で殺された妊婦のご主人が復讐の為に作った歌。じゃあ、もう一つってなんですか? この歌と対になっているんですよね。そういう事件か何かがあったんですか?」


その声に反応したのは柏木ではない。二人の話をきいていた圭介がどこか不思議そうな声を上げていた。


「水瀬さん、それって柏木さんに訊くことですか? どっちかっていうと、そういう事件のことなんかは水瀬さんたち警察の方が詳しいと思うんですけど?」

「うん、そう思う。そりゃ、お父さんは家でそういう話はしてくれないけど。でも、柏木さんが噂で耳にするようなことなら、警察が知らないはずないもん」


圭介の声に遥もここぞとばかりに口を出している。そんな高校生二人の姿に苦笑を浮かべている水瀬。そんな表情のまま、彼は柏木に改めて問いかけている。


「たしかに圭介君や遥ちゃんの言いたいことも分かるんですよ。でもね、僕たち警察は巷に流れている噂話にまで耳を傾けている余裕はない。そんなことしていたら、体がいくつあっても足りない。そのことは、遥ちゃんが一番よく知っているでしょう?」

「そう言われればそうだけど……でも、だからって言って柏木さんに頼ってるみたいな感じがして嫌なのよね」

「遥ちゃん、気にしなくてもいいですよ。水瀬さん、僕が知っているのはさっきも言ったようにネットや店に来るお客さんからの噂話ですよ。それでもいいんですか?」

「いいよ。そういう情報の方が客観的に見れる場合あるし。あ、親父さんは違う?」


思い出したように川本に話を振っている水瀬。その声に川本は返事をせずにタバコをふかしている。それが彼なりの肯定だということを知っている水瀬は、柏木の顔をじっとみつめていた。


「親父さんの返事はあれだから。だから、噂でもいい。柏木さんが知ってることって何?」

「わかりました。ここまで話したんだし、最後まで話さないと川本さんたちも納得しないだろうし、圭介君たちも居心地悪いよね。もっとも、後の話は簡単ですよ。ほんとに噂話の域から出ていないことですから」

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