闇に響く籠の歌
「そうよ。今の圭介の言い方だったら、誰だって気になると思う。それに奥寺君は圭介の友だちじゃない。だから、仲間はずれにされてるって思うのよ」


机に座って足をプラプラさせた遥がそう呟いている。その姿に、ちゃんと椅子に座れ、と冷め部圭介の心の声を無視したように、彼女は話し続けている。


「ね、茜ちゃんもそう思うわよね」

「ええ。今の篠塚君の言い方って、気にしてくださいって言っていたもの」


遥の声に被さるようにしてそう言いながら、茜はフッと笑っている。その姿に背筋が寒くなるものを覚えた圭介は大声を出していた。


「どうして、ここで安藤まで入ってくるわけ? なんだか激しく納得がいかないんだけど」

「あら、前にも言ったと思うわ。私と遥は真理を追究するための同士なんだから。だとしたら、情報は共有するものだし、この場にいるのが当然じゃない」

「そういえば、そんなこと前にも言ってたな。だがな、お前らがやってることは真理の追究なんて大層なことじゃなくて、ただの野次馬根性だろうが!」

「そんなことない。私も遥も真面目に考えてるの。考えてるからこそ、3のつく日に不思議なことが起こってるって分かるんじゃないの」

「好きなように言ってろ。とにかく、俺はこの話からは外してくれ。ついでに眠い」


そう言うと、圭介は脱力したように机にうつぶせになっている。このまま寝ることができれば最高なんだけどな。そんな思いが、彼の中には生まれている。

しかし、彼のそんな願いが叶う様子はない。圭介が始業前の二度寝を楽しもうとしている背中に、遥がペタリと貼りついてきていたのだ。


「圭介。この状況で逃げるっていうの? 信じられない。せっかく、いろいろ情報をもらったのに。それなのに、あんたってそれを有効利用しようとは思わないの?」

「思わない。っていうより、俺がこの件に興味をもってないのって知ってるだろうが」

「でも……」

「『でも』でも『しか』でもない。お前が首を突っ込みたがるのはその性格だし仕方がないさ。でも、俺まで巻き込むなって言いたいわけ」


それだけ言いきると、話はこれで終了、というとうに机に突っ伏していく圭介。そんな彼に、遥は必死の形相で声をかけ続けていた。

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