闇に響く籠の歌

「そうよ、そうよ。ホントに圭介って頑固なんだから。さっきの奥寺君の話が気になって仕方がないのよね。でも、今までそのことを否定ばっかりしていたから、認めたくないのよね」

「そうなんだ。そういうところってホント子供よね」


チロリと圭介の方を見ながら、呆れたような口調で茜がそう呟く。この言葉は聞き捨てならない。そう思っている圭介だが、ここで反論すれば間違いなく遥の思惑にはまる。

そう思うからこそ、彼はグッと拳を握り言葉をだすことを堪えている。そんな彼に追い打ちをかけるように奥寺がのんきに声をかけてきた。


「安藤もそう思うだろう？　ホント、篠塚って幼稚なところあるよな。一瀬の話に乗ってこないのもオカルトが苦手なんだってさ。いや〜、人って見かけによらないよな」


そう言うなり、奥寺がカラカラと笑いだす。友人からのこの言葉は正直いってキツイ。そう思う圭介だが、それでもここは我慢。そう思っている彼の背中にペタリと貼りついた遥は甘えたような声を出してくる。


「ね、圭介。今日の放課後、その斎藤さんっていう人に会いに行こうよ」

「なあ、遥。さっきまでの話の流れでどうしてそうなるんだ？　前からお前の頭っておかしいんじゃないかって思ってたけど、これで確定したよな」

「そんなことないって。だって、茜ちゃんも奥寺君もこの話には興味あるのよ。だったら、斎藤さんに会いに行くのは当然じゃない」

「そうよね。あ、奥寺君。その人のところ、案内してくれるわよね」


茜の声にコクコクと頷いた奥寺は急いでメールを打っている。次の瞬間には返事が返ってきたことに半ば驚きの声を上げながら、彼は茜の言葉に頷いていた。


「安藤、問題なし。今、姉ちゃんに斎藤さんの家の住所きいたから。でも、マジで姉ちゃん暇なんだ。速攻で返事来たぞ」


この言葉に圭介は諦めなければいけないということをおぼろげながら悟っている。結局、彼は逃げることもできずに遥たちと放課後の行動を共にすることを約束するしかできなかった。