闇に響く籠の歌

幕間

『ねえ、誰かいる？』


『いないことないけど？　何か用事？』


『用がないと、ここで喋っちゃいけないの？』


『そんなことないけど？　でも、訊ねてきたのはそっちじゃない。違う？』


『たしかにそうよね。でも、誰にも聞かれたくないんだもの』


『だったら、ここで喋らなくてもいいじゃない。ここは誰が聞いているのか分からない場所よ』


『そうよね……でも……』


『黙ってるのが辛いの？　じゃあ、耳をふさいでいてあげる。好きなだけ喋れば』


『ありがとう』


『どういたしまして。今はあんたの相手してるけど、石だと思ってくれればいいから』


『石ね。それなら、安心して喋れるかな？』


『……』


『私、人を殺しちゃったのかもしれない……』


『急に何いうのよ』


『あら、石だって言ってたんじゃないの？　違ってた？』


『それはそうかもだけど……ちょっと、黙ってられないって思ったのよね』


『やっぱり、そう言うのね。分かってたけど』


『ふ～ん。分かってて話したんだ。人殺しってやることが大胆なのね』


『私、殺したとハッキリとは言ってないわよ。勘違いしないで』


『しちゃったかも、なのよね。でも、こうやってここで喋るってことはホントなんじゃないの』


『あら、どうかしら』


『ガセでこんな話したの？　わ、最悪』


『そっちが乗ってきたんじゃない。楽しかったわ』


『ちょっと、待ちなさいよ。あんた、人のこと騙して楽しんでたの？』


『どうかしら？　真実なんていつまでたっても分からないものよ』