闇に響く籠の歌
「おいおい。そんなことを教えると思ってるのか? だから、餓鬼は困るっていうんだ」

「すみません……でも、今から僕たちもそのアパートに行くもんで。なので、ちょっと気になったっていうか……」


圭介のその声に川本はフン、というように鼻を鳴らしている。そのまま、彼はグイッと柏木の方へと体を向けていた。


「ま、お子ちゃまたちはほっておいたとしても、お前がここにいるわけは? たしか、今日は店が休みじゃないよなぁ」


そう言いながら、川本はタバコをくわえている。そして、大きく煙を吐き出すと、さっさと白状しろ、というような視線を柏木へとやっている。そんな視線を向けられた方はどこか困惑したような表情を浮かべるしかできなかった。


「川本さん、それって人権侵害じゃないですか? 別に店の休みを川本さんに報告しないといけないっていう理由はないはずですし」

「そうか? だが、俺としては行く先々でお前がいるっていうのが気にくわないんだけどな」

「親父さん。その辺にしといた方がいいですよ。あんまり無茶を言うと、どこで何を言われるか分かったものじゃないんですから」

「そうよ。川本さんがあんまり無茶いうんなら、お父さんに言いつけてやるから」

「おい、遥。それこそ、横暴だ。おじさんがそんなこと認めるはずないだろう」


確かに、川本の言い方は腹が立つ。だが、いくらなんでもこれは言いすぎだ。そう思う圭介は慌てて遥を抑えつけようとする。そんな彼女の姿に川本はため息をつくだけ。

その姿に、馬鹿にされたと思った遥が顔を真っ赤にするが川本は気にもとめない。彼は柏木にキツイ視線を向けている。


「おい、柏木。聞いてたのか? そりゃ、お前の店の休みを一々報告してもらおうとは思ってないさ。だが、こうもお前が俺たちの前をチョロチョロするのは気にくわないってね」

「別に川本さんの前をウロチョロしているんじゃないんですけどね」

「そうか? その割には、よくみかけると思うんだがな」


柏木の言葉に苛ついたような口調で川本が返事をする。そのことに軽くため息をついた柏木は、仕方がないというような調子で言葉を続けていた。

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