闇に響く籠の歌
第6章
何度叩いても反応しなかった扉が開いた。
この事実もさることながら、そこから飛び出してきた人物の姿があまりにも凄まじい。このことに圭介たちは呆然とすることしかできなかった。
だが、相手は彼らのそんな思いに気がついていないのだろう。もう一度、悲痛な思いを込めた声で水瀬に呼びかけている。
「水瀬君! 私よ! 綾乃よ! 深雪の友だちだった! 覚えてないの?」
その声にようやく水瀬が何かを思い出したような表情を浮かべている。そのまま、確かめるような声がその口からは漏れていた。
「えっ!? ひょっとして深雪の友だちだった斎藤さん? 本当に?」
「本当よ! 私、斎藤 綾乃よ! 信じてくれないの?」
「い、いや……信じるも何も……斎藤って珍しい名字じゃないし、てっきり同姓同名かと……それに、僕の知ってる斎藤さんって、そんなに小汚くないからね」
彼の言葉があまりにも自然だったからだろう。飛び出してきた相手の姿をさり気なく貶しているということに気がついている者はいない。いや、圭介だけは気がついたのか、目を丸くして水瀬の顔をみている。そんな彼に、斎藤と名乗った相手は必死な顔で言い募っていく。
「そ、そうよね……水瀬君が言いたいことも分かる。でも、ほんとに私は斎藤 綾乃なの! これは絶対に間違いないから」
「わかりましたよ。じゃあ、斎藤さん。どうして、僕に助けを求めるのですか?」
そう言う表情からは、『できるだけ早く終わらせよう』と思っていることは間違いない。だが、それとは相反する穏やかな調子に綾乃は安心したのだろう。ポツリ、ポツリと言葉を口にしていく。
「あ、あのね……このところ、知り合いが何人も死んじゃって……」
「そうなんだ。ところで知り合いってどういう関係? 斎藤さん、今の生活ってどう考えても引きこもりでしょう? それなのに、知り合いがいるの?」
水瀬の言葉に、彼女は一気に顔を赤くする。だが、このままでいいはずがない。そう思い直したようにゆっくりと口を開いていく。
「ひ、引きこもりって言わないでよ。ちょっと前までは友だちとも遊びに行ってたのよ。そりゃ、今はこんな格好しているけど……」
この事実もさることながら、そこから飛び出してきた人物の姿があまりにも凄まじい。このことに圭介たちは呆然とすることしかできなかった。
だが、相手は彼らのそんな思いに気がついていないのだろう。もう一度、悲痛な思いを込めた声で水瀬に呼びかけている。
「水瀬君! 私よ! 綾乃よ! 深雪の友だちだった! 覚えてないの?」
その声にようやく水瀬が何かを思い出したような表情を浮かべている。そのまま、確かめるような声がその口からは漏れていた。
「えっ!? ひょっとして深雪の友だちだった斎藤さん? 本当に?」
「本当よ! 私、斎藤 綾乃よ! 信じてくれないの?」
「い、いや……信じるも何も……斎藤って珍しい名字じゃないし、てっきり同姓同名かと……それに、僕の知ってる斎藤さんって、そんなに小汚くないからね」
彼の言葉があまりにも自然だったからだろう。飛び出してきた相手の姿をさり気なく貶しているということに気がついている者はいない。いや、圭介だけは気がついたのか、目を丸くして水瀬の顔をみている。そんな彼に、斎藤と名乗った相手は必死な顔で言い募っていく。
「そ、そうよね……水瀬君が言いたいことも分かる。でも、ほんとに私は斎藤 綾乃なの! これは絶対に間違いないから」
「わかりましたよ。じゃあ、斎藤さん。どうして、僕に助けを求めるのですか?」
そう言う表情からは、『できるだけ早く終わらせよう』と思っていることは間違いない。だが、それとは相反する穏やかな調子に綾乃は安心したのだろう。ポツリ、ポツリと言葉を口にしていく。
「あ、あのね……このところ、知り合いが何人も死んじゃって……」
「そうなんだ。ところで知り合いってどういう関係? 斎藤さん、今の生活ってどう考えても引きこもりでしょう? それなのに、知り合いがいるの?」
水瀬の言葉に、彼女は一気に顔を赤くする。だが、このままでいいはずがない。そう思い直したようにゆっくりと口を開いていく。
「ひ、引きこもりって言わないでよ。ちょっと前までは友だちとも遊びに行ってたのよ。そりゃ、今はこんな格好しているけど……」