闇に響く籠の歌
「何度も同じこと言わせないで! 私は何もしていないんだから。何もしていないのに、深雪が死んだ原因みたいに言わないでよ!」
柏木の言葉に反発するようにそう叫んだ綾乃は自分の指を噛んでいる。その姿に、柏木は呆れたような顔を向けている。だが、彼女が口にした『何もしていない』という言葉が引っ掛かったのだろう。今度は少し穏やかな調子で訊ねている。
「何もしていなかったって言いましたよね。つまり、あなたがしたことは、彼女が落ちたのを見ていただけだった。彼女が落ちる時に助けようとはしなかった」
「そうよ。でも、それがいけないことなの? だって、落ちかけてたのよ。下手に手を出したら私も落ちちゃうじゃない」
綾乃の言葉はある意味で当然といえるものなのだろう。そのためか、その場にいた誰もが黙りこくっている。そんな中、柏木がポツリと言葉を口にしていた。
「そうなんだ。つまり、あなたは深雪さんを見殺しにした。それって、間接的にでも彼女を殺したってことですよね」
「だから、その意味が分からないわ。私は深雪を殺してなんかいないもの」
綾乃の言葉に柏木は大きく息を吐きながら応えている。
「そうかもしれませんね。でも、見方を変えればあなたは人殺しだ」
彼がそう告げたとたん、その場には『か〜ごめ、かごめ』という歌が響いてくる。どこからその歌が聞こえてくるのだろうと圭介たちが顔を引きつらせる。その時、柏木は綾乃に全身でぶつかっていた。
「な、何を、するの?」
「あなたみたいな人に何を言っても分かってもらえないですからね。でも、これは自業自得なんです。それくらいは分かるでしょう?」
柏木が綾乃の耳元でそう囁く。その声の意味がわからないのか、綾乃は不思議そうな表情を浮かべるだけ。だが、次の瞬間、彼女は口から血を吐くと苦しげなうめき声をあげていた。
「斎藤さん、どうかしたんですか? それより、柏木さん、何をしたんですか!」
驚いたような水瀬の声が響く。それに対して、柏木は冷ややかな表情を向けるだけ。その彼の手に銀の光がある。そのことに気がついた圭介たちはその場に縫い付けられたようになっていた。
「か、柏木さん……それって、なんですか?」
柏木の言葉に反発するようにそう叫んだ綾乃は自分の指を噛んでいる。その姿に、柏木は呆れたような顔を向けている。だが、彼女が口にした『何もしていない』という言葉が引っ掛かったのだろう。今度は少し穏やかな調子で訊ねている。
「何もしていなかったって言いましたよね。つまり、あなたがしたことは、彼女が落ちたのを見ていただけだった。彼女が落ちる時に助けようとはしなかった」
「そうよ。でも、それがいけないことなの? だって、落ちかけてたのよ。下手に手を出したら私も落ちちゃうじゃない」
綾乃の言葉はある意味で当然といえるものなのだろう。そのためか、その場にいた誰もが黙りこくっている。そんな中、柏木がポツリと言葉を口にしていた。
「そうなんだ。つまり、あなたは深雪さんを見殺しにした。それって、間接的にでも彼女を殺したってことですよね」
「だから、その意味が分からないわ。私は深雪を殺してなんかいないもの」
綾乃の言葉に柏木は大きく息を吐きながら応えている。
「そうかもしれませんね。でも、見方を変えればあなたは人殺しだ」
彼がそう告げたとたん、その場には『か〜ごめ、かごめ』という歌が響いてくる。どこからその歌が聞こえてくるのだろうと圭介たちが顔を引きつらせる。その時、柏木は綾乃に全身でぶつかっていた。
「な、何を、するの?」
「あなたみたいな人に何を言っても分かってもらえないですからね。でも、これは自業自得なんです。それくらいは分かるでしょう?」
柏木が綾乃の耳元でそう囁く。その声の意味がわからないのか、綾乃は不思議そうな表情を浮かべるだけ。だが、次の瞬間、彼女は口から血を吐くと苦しげなうめき声をあげていた。
「斎藤さん、どうかしたんですか? それより、柏木さん、何をしたんですか!」
驚いたような水瀬の声が響く。それに対して、柏木は冷ややかな表情を向けるだけ。その彼の手に銀の光がある。そのことに気がついた圭介たちはその場に縫い付けられたようになっていた。
「か、柏木さん……それって、なんですか?」