闇に響く籠の歌
「一瀬、悪い。俺も分からん」

「え? 奥寺君も? やっぱり、圭介の仲間なんだ。じゃあ、特別に教えてあげる」

「おい。何、ドヤ顔してるんだ。言っとくが、お前のオカルト趣味に付き合うつもりないんだぞ」

「あら、いいじゃない。今の話題にはちゃんとついていっとかないと」

「安藤、お前までそんなこと言うな。俺は別に知らなくても困ってない。奥寺もそうだろう?」

「ん? そんなことないぞ。こういうのって聞いてみたいっていう気もあるけど?」


奥寺のその声に、圭介は思わず脱力してしまっている。なにしろ、このままでは無理矢理、遥たちの話に付き合わされてしまう。そうなれば、何か厄介なことに巻き込まれるのは必然。

そんな不安が圭介の中に生まれたのだろう。必死になって、話の輪の中に巻き込まれないように頑張っていたのだ。だが、悲しいことに頼りの綱である奥寺が話に興味を持ってしまった。

この分では、逃げることはできないんだろうな。そう思って、半分諦めの境地に至った圭介の耳に、どこか勝ち誇ったような遥の声が飛び込んでくる。


「圭介。どうして、そこまで嫌そうな顔するの? そういえば、昔っからこの手の話って苦手だったわよね。何かトラウマでもあるのかな〜」

「好きに言ってろ。で、人がこの手の話を嫌いだってこと知ってて、ここまでしつこく言ってくるお前の神経も疑う。俺に恨みでもあるのか?」

「え、そんなことないよ。流行をおさえとくのは今時の高校生の常識でしょう? だから、教えてるんじゃない」

「はいはい。じゃあ、教えてもらうけど、話は手早く頼むよ。ついでに、余計な脚色はなし。わかった?」


圭介の最後の一言に何かを感づいたのだろう。遥がドヤ顔からにんまりとした笑みを浮かべる。

その表情に嫌なものを感じた圭介だが、いまさら逃げることはできない。話をしろというような視線を向けているだけだった。


「どうやら、圭介もある程度は知ってるみたいだから、話は早いわよね」

「そうみたいね、遥。じゃあ、簡単に説明するわね。篠塚君は知ってるみたいだけど、奥寺君は『かごめかごめ』の歌って知ってる?」

「はい? それって、あのわらべ歌の? 『か〜ごめかごめ』っていうヤツ?」

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