黒瀬くんの恋模様。
「ふふふ。それ聞いちゃう?」
文香は少し照れたように目を伏せた。
「ずっと、好きだったよ。でもね千尋と両思いになれても嬉しくないって分かってたから」
たぶん俺に好きになるように頼んだからだろうな
自分が頼んで好きになってもらっても嬉しくない。
俺もそう思って思ってたからよくわかる。
「両思いってすごいことだよね。それで付き合えるってもっとすごい。」
文香の言葉に俺は頷いた。
好きになった人と付き合えるってどれくらいの確率なんだろう。
「そのためには素直にならなくちゃダメだよね…」
素直にか…
素直になるって本当に難しい。
相手の気持ちを考えると自分の気持ちを押し付けることなんてできなくて、でも伝えられないと苦しくて仕方がない。
「ふぅー。はい!」
俺が真剣に考えていると、文香が急に手を上げた。
「私、澤口文香は川上晴樹のことがずーっと好きでした!いや、今も好きです!!!」
そして俺を見て微笑む。
「これが私の素直な気持ち。ずっと逃げて、千尋にも苦しい思いをさせたけどこれが私の素直な気持ちなの。」
怒った?と微笑みながら聞く文香は、俺が怒ってないことなんてきっと分かってる。
「叶わないって分かってるから必死に隠して、でもひょこって急に顔を出すの。だから辛くなる。…きっとそれが好きってことだよね?」