黒瀬くんの恋模様。
文香はゆっくりと顔を上げた。
「好きだったけど…好きだからこそ離れることを選んだ。」
それから話されたあの時の真実。
俺と文香が逃げてきたものは、ハル先輩の優しさだったらしい。
俺はハル先輩の話を聞きながら何度も驚いた。
文香のためを思って別れたこと。
それでも、やっぱり文香を忘れられなかったこと。
本当は俺に文香を獲られるのが嫌だったこと。
文香は全部知っていたかのように優しく頷いていた。
「色々迷惑もかけた。辛い思いばっかさせた。傷付けた。それでも…やっぱり俺は文香しか好きになれねぇみたいなんだ」
ハル先輩はバスケをするときのように真剣な目で文香を見る。
文香は唇を噛み締めてなにかを堪えていた。
「この3年間、文香を忘れた日なんてなかった。離れたせいで余計に好きになった。…本当に困った。あんな振り方したのに、泣かせたのに会いたいって思うなんて…。とうとうがまんできなくなって戻ってきちまったんだ」
そこまで言うとハル先輩は文香の手を握った。
「…もう一回、何てわがままは言わねぇ。聞いてくれてありがとな」
そう言って悲しそうに笑うと文香の頭をぽんぽんとした。
「……でよ…」
全員が文香を見た。
その顔は涙でぐちゃぐちゃだった
「勝手なことばっかり言わないでよ!!!!」
涙をたくさん溜めた目でハル先輩を睨む文香
「ごめんな」
困ったようにしながらもそんな文香を愛しそうに見るハル先輩。