黒瀬くんの恋模様。
「…また、急に離れていかれそうで…怖い」
ポツリポツリと話し出した文香。
「…ハルのことが好き。でもだからこそ怖いの…。あの時だってハルも私もちゃんと好きだったのに…離れたから」
涼は文香の声にそっと頷く。
そのおかげか文香は素直にたくさんのことを話した。
怖くて仕方がない。
でもハル先輩のことが好き。
本当は今すぐ追いかけて、気持ちを伝えたいのに…
あの日のことが頭を過る。
そうすると力が入らなくなって、立ち上がれない。
そう言った文香は痛々しく微笑んで立とうとした。
「きゃっ」
立とうとしたのだけれど、腰を上げようとした時点でバランスをくずしてしまった。
「…こうなっちゃうの」
文香はへへへと笑ったあとに少しため息をついた。
「このまま終わり、なのかな」
店の出入り口を見て呟いた小さな声は、大きく響いた。