黒瀬くんの恋模様。
「あ…、千尋…」
あのあと文香だけが救急車に乗って、俺と涼と麗子サンと早坂が後から病院へと向かった。
病院に着くとハル先輩のベットの側で文香が呆然としていた。
「…ふみちゃん」
涼はそんな文香に抱きついた。
そしてポンポンと頭を撫でる。
まるで、いつも俺が涼にしてるみたいに…
ハル先輩を見ると傷の手当てをされて寝ていた。
しかしその顔はパンパンに腫れて、少し考えなければ誰なのか分からない。
「…ひでぇな」
ポツリと呟いた早坂。
あのとき来た警察は実は早坂の親父さんだったらしい。
麗子サンの指示でこっそりと親父さんにメールで通報したんだとか。
麗子サンの先を読んだ判断と、早坂の親父さんの存在がなかったらと考えると寒気がする。
「……っ」
麗子サンは唇を噛み締めていた。
…俺は?
俺はどんな顔をしてる?
わからない…
そこからは誰も話さず、思い空気だけが流れた。
そしてその日は面会時間がきて、そのまま解散した。