黒瀬くんの恋模様。
「ねぇ、千尋。」
入学した直後、文香が珍しい笑顔で俺を呼んだ。
「私ね、すっごく可愛い子と友達になったの」
お前以上に可愛い女なんていねぇよ。
俺はそう思いながら、ふーんって空返事してたっけ。
「信じてないでしょー!本当にね可愛いのよー!」
文香は頬を膨らまして、俺を少し睨んだ。
そんな顔したって怖くねえから。
「本当に、本当に可愛いの。私なんかよりずーっとね。」
人のことを、めったに褒めない文香が褒める女ってどんな奴だよ
「その子の名前はね、」
「橘…涼」
俺の手を握る、こいつだ
「涼って名前が似合う、強い子なの」
そんなことを言ってたっけ
橘涼か…
こいつといれば、俺は変われる気がする