黒瀬くんの恋模様。
「…寂しいな。遊び人の千尋も本気の恋をしちゃうんだ~。私だけおいてけぼり」
寂しそうに、でも嬉しそうに笑う文香に腹が立った。
…文香だけにはそんなこと言われたくなかった。
俺は文香にずっと本気で恋してたのに、文香にとって俺は遊び人か…
まぁ、悪いのは俺なんだけどさ。
「…何で、俺が涼を好きになるって言い切れる?」
振り絞った言葉がこれ。
だせぇけどここで、俺が好きなのは文香だ、なんて言えるほど俺は強くない。
俺が振り絞った言葉に文香はにこにこしながら答える。
「私が一瞬で安心できる魔法の手が、私だけの物じゃなくなったから。その手で涼を救ってね。」
そう言って唖然とする俺の隣で誰かに電話をかけ始める。
「あ、トモくん~?今から会えない?うんっ!待ってるぅ~!」
…新しい男ね。
電話を終えた文香を呼び止めた。
「俺が涼を好きになるとか、文香にだけは言われたくなかったよ。」