黒瀬くんの恋模様。
ぎゅっと手に力が入った。
俺は、愛してもらえないんだ。
文香にも、俺を好きだと寄ってきた奴らにも。
ちらっと涼を見る。
涼も俺を愛してくれないのか?
涼には離れてほしくない。
愛してほしい。
さらに手に力が入った。
もう痛みすらも感じないほど強く。
「好きだから一緒にいられるの。どちらかの気持ちがなくなったら別れるものよ」
…その言葉を聞いたときに、するりと手の力が抜けた。
麗子サンはきっと早坂にむけて言ったんだ。
自分の気持ちは無くなってないと言うことを伝えるために。
でも、その言葉は俺に衝撃を与えた。
『どちらかの気持ちがなくなったら別れるものよ。』
俺は今まであいつらのことばかりを責めてきた。
あいつらだけじゃない。文香のことも。
どうして俺を愛してくれない?
そんなことばかり。
でも、恋愛は二つ気持ちがなくちゃ成立しないんだ。
あいつらに愛してほしいと要求してばかりで俺はあいつらを愛したのか?
心の穴を埋めてほしいばかりで、あいつらの心の穴を埋めてやろうとしたのか?
してねぇよ。
だって、文香が好きだったんだから…
じゃあ、その文香には?
どうして俺じゃ駄目なんだって思ってばかりで愛してもらう努力はしたのか?
愛してほしいと願うだけで、愛を伝えたのか?
俺は、求めてばかりでなにもしてなかった。
自分から取りに行かなきゃ愛なんて得られないのに