黒瀬くんの恋模様。
「涼?なんかしたのか?」
私の前を通りすぎるときに声をかけてくれた黒瀬くん。
きっと私が二人を見ていられなくなって、うつむいてたから気にしてくれたんだろうな。
優しい彼がする当然の行動にも、胸がドキドキしてうるさい。
私はそれを耳に入れないように思いっきり顔をあげた。
…あ…
「どした?具合でもわりぃの?」
そう言った黒瀬くんは全く私を見ていなくて
どこか分からないけど私の右側を不自然に見ていて
私は気づいてしまった。
黒瀬くんは、ふみちゃんが好きで
私のことなんか、ただの友達にしか思ってなくて
あの図書室での時間を大切にしているのも、
黒瀬くんが好きなのも私だけ。
ねえ、黒瀬くん。
私の右側のどこをみているの?
…もしかして、ふみちゃん?
「なんでも、ないよ」
私は無理矢理口角をあげて笑って見せた。
ふみちゃんに私との仲を勘違いなんてされたら大変だよね
そう思って一歩下がってみる。
「涼?」
黒瀬くんは不思議そうに私の名前を呼んだ。
…嬉しいのに、苦しくて息が詰まる。