黒瀬くんの恋模様。
「すいませんっ」
私は腕の中から抜け出して、軽く頭を下げた。
「え?お前もしかして橘涼?」
私が顔をあげた瞬間、私を助けてくれた人は目を丸くしてそう言った。
「え…はい」
どうして私の名前知ってるんだろう…
目の前にいるその人を見つめてみる。
黒瀬くんよりも少し背が高い
…と思ったけどツンツン立ててる髪のせいかもしれない。
顔は一重で、目があった人は睨まれてると勘違いしそうなくらい目付きが悪い
それなのに顔は整っていて、俗にいうイケメン。
黒瀬くんとは対照的なイケメンだな…
そう思ってて悲しくなってくる。
だって何を考えてても黒瀬くんが出てくるんだもん。
私ってこんなに黒瀬くんのこと好きだったんだ…
「えっちょっと!」
気がつくと目から涙がぼたぼたと落ちてきていて、目の前の人は焦っていた。
「お、俺なんかしたか?」
私は勢いよく頭を横に振る。
ほんと、人に迷惑かけるとか自分最低…
自己嫌悪に陥っていると、目の前の人がティッシュを私に渡してきた。
「とりあえず泣き止め」
「は、はい…」