黒瀬くんの恋模様。
千尋side
「ダルいから保健室行ってくるね」
そう言った涼を俺も文香も引き留められなかった。
涼を好きだと自覚したせいで、アイツの顔すら見れない。
だからさっき涼に話しかけといて文香の方ばかり見てしまった。
やばい、と思ったときにはすでに遅くて
涼は気まずそうな顔をしたまま出ていってしまった。
やばいと思ったのは文香も同じだと思う。
「ごめん…何のフォローも出来なくて」
あの気が強い文香がこんなこと言ってるんだ
少なからず責任を感じてしまっているらしい。
「はぁ…どうすっかな…」
これじゃわざわざ教科書借りに来た意味ねぇじゃん。
涼の顔みたいし、少しでも緊張しないで話せるようになりたくて教室まで来たっつーのに。
「あー。ほんとだせぇ」
自分で自分が嫌になる。
文香を好きだった頃には無かったこの感覚。
好きなのにどうしようもなくて、なにもしてない自分が情けなくて腹立たしい。
好きだって気持ちを照れとか恥ずかしさが邪魔をして、自分の思い通りにならない。
どうしたらいいんだ、とか
涼は今何してんのかな、とか
もっと他にもいろんなことを考えたけど、もともと頭がよくない俺には結論までたどり着くこともできなかった。
最終的には放課後までにどうにかすりゃあいいか!って感じで無理矢理まとめて
そしてやっぱり何もまとまらないまま放課後を迎えた