黒瀬くんの恋模様。

千尋side




「あの~、文香さん?」


「なによ」



学校を抜け出してから30分はたとうとしている。



が、どこに向かっているか全く分からない。



それ以前に涼の居場所を知っているのか文香を呼び止めて聞いたところ…



「知ってたらとっくに会いにいってる」




と言われてしまい、俺はうなだれるしかなかった。




「じゃあ、どこに向かってんだよ?」



どこに向かってるかも分からない奴の後ろを歩くのは何だか怖い。



だからとりあえず行き先だけでも聞いておこうと思ったんだけど…




「…とりあえず駅?」



俺はその答えに愕然とした。



「…文香さん。駅はあっちです」



俺たちは駅とは真逆に歩いていた。



「おっかしいな~、私のスマホはこっちだって言ってるのに~」



俺は文香のスマホを覗く。



…いやいやそれ逆さまだし




俺はため息をついて、駅へと向かった。




後ろからは文香がついてくる足音がする。



こいつ、方向音痴だったんだな…



何年も一緒にいて知らなかったこと。



昔は文香について知らないことの存在が発覚する度にショックを受けてたけど、今は違うかった。



どっちかっつーと、涼も方向音痴っぽいなとか



涼が迷ったら半べそかいてそうだなとか




涼のことばかり浮かんでくる。



俺って重症だな~



















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