黒瀬くんの恋模様。
“千尋!今日はハルちゃんがね“
“ハルちゃんと一緒にね“
“聞いてよ!ハルちゃんが“
その日から文香はこんなことばかりを俺に話した。
その度に胸が痛んだけど、でも文香が幸せそうならそれでよかった。
それからしばらく経って、季節は少し肌寒い秋。
レギュラー争いに参加できてなかった俺はずっと居残り練習を続けていた。
「千尋」
背後から聞こえたいつもと違う低い声。
「ハル先輩」
振り替えるとジャージ姿のハル先輩がいた。
「どうしたんすか?」
俺はドリブルしながらハル先輩に近づく。
ハル先輩はボールを見て微笑むと、パス練しようかと言って俺からボールをとった。
ハル先輩は県内でも1、2を争う選手で、県の強化選手にも選ばれてた程。
そんな人と二人で練習できると思うと俺はわくわくした。
そこから二人で全力でパス練をして、流れでシュート練習まで見てもらった。
「すっげ!入りましたよ!!!!」
ハル先輩のおかげでスリーポイントを10回連続で決めることができ、俺はすっごい浮かれていた気がする。