黒瀬くんの恋模様。



「ち、ひろ」



中2の冬。



冬休みに入る直前のある日




文香は泣きながら俺の家に来た。



その日は家族はそれぞれの用があり俺は次の日の夕方まで一人だった。



「どうした?」



気の強い文香が泣いている。



それは昔から緊急事態の合図だった



ある時は飼ってたインコが逃げ出した時、またある時は文香のお父さんの盆栽を割った時


本当に大変なとき、反省してるときにしか文香は泣かない




じゃあ、今回はどうしたんだ?



俺は文香の頭を撫でながら続きの言葉を待った。



「ハルに、フラれた…」



撫でてた俺の手が止まった。




フラれたって…別れたってこと?




「なんで?昨日まで…てか、今日も普通だったじゃん」




登下校は一緒にすごし、時間を見つければ非常階段で話す。




そんな彼らの普通を今日もその通りに過ごしていた。




それなのに?



「そんなの私が聞きたい…。こんなに好きなのに『もう、一緒にはいられない』その一言ですべてが終わっちゃった」



そこまで言うと声をあげて泣き始めた。



俺は文香が落ち着くようにと頭を撫でて声をかけ続けた。




「明日、俺がハル先輩と話してくるから安心しろ」



たしか、そんな感じの言葉を。



でも俺は間違ってたんだ




明日聞けばいいなんて、間違ってたんだ
















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