黒瀬くんの恋模様。
「俺はどうにか一人でこっちに残れないか何度も説得した。でもね、許してもらえなかった。義務教育中の未成年を一人残せないってね」
ハル先輩は切なそうに微笑むと、私に紅茶冷めてるよ~なんてふざけたように言ってきた。
ハル先輩、と一言私が言うとしかたないなとでも言うように背筋を伸ばして口を開く。
「悩んだんだ。遠距離恋愛か別れか。俺的には文香と別れたくなかったよ。でも文香は?文香はああ見えて寂しがり屋だから、どうせ俺の見えないところで泣くんだよ。」
ふみちゃんが寂しがり屋なのは私も知ってる。
泣き虫なのもよく分かってる。
「文香の負担を考えたら別れるしかなかった。」
そんな悲しいことって…
そう思っているとハル先輩はへへへっと笑った
「かっこいいこと言ってるけど、本音では遠距離になったあとに別れを切り出されるのが怖かったんだろうな」
そう笑いながら言ったハル先輩に泣きそうになった。
「ハル先輩は…今でもふみちゃんが好き?」
私の質問にハル先輩は少し目を見開いて、そのあと微笑んだ。
「好きだよ。あの日と変わらず…いや、そのときよりも好き」
だったらもう一度…
そう思ったときに浮かんだ黒瀬くんとふみちゃんの姿
「もう一度、は無理だろ。あの時から千尋は文香を好きだったよ。文香もやっと千尋の良さに気付いたのかな~」