鬼姫と恋の唄(仮)
第一章
・鬼の襲撃
「・・・あっけない。」
そう呟いた少女は、シュッと刀についた血を振り払い鞘に刃をおさめた。
自分のではない赤い血が少女の真っ白な肌に華をさかせていた。
少女の背後には燃え盛る炎やボロボロに崩壊した小屋。
そして、数分前までは生きていたであろう人間や家畜の亡骸が無残にもころがっていた。
「おい紅葉。なにイラついてんだァ?」
ゲヘへへへと怪しい笑い声を響かせながら、両手に馬をもった赤鬼が紅葉に近づいていく。
紅葉と呼ばれた少女は5メートルはあるだろう赤鬼を見上げる。
「別に。それより青風は?」
「あァ。あいつなら・・・」
赤鬼の赤月は荒れ果てた地で家畜や人間を貪り食う青鬼に目線をうつした。
「はぁ・・・」と深い溜息をついて目線を赤月に戻す紅葉。
乱れた着物を整え、胸の下まである綺麗な黒髪をかんざしで結う。
すると、髪にかくれていたとがった耳がすがたをみせた。
頭部には小さいがとがった角が2本。
「そのくらいにしときな青風。父様が待ってる」
「わかったよ・・・姉上」
バリバリと嫌な音を響かせながら顔をあげた青風の口元は血でひどく汚れていた。
「テメーのその食い意地はどうにもならねぇのか?」
「兄者、食えるときに食っとかねーと後々後悔するぜ」
ニタアと笑う青風に、赤月はまた溜息をもらし住処のほうへ足をすすめた。
そんな様子を背にさっさと先を行く紅葉。
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