鬼姫と恋の唄(仮)
「んな!?あんた、逃げるき?」
「へっ。安心しな、また明日会えるさ」
「だ、誰もあんたに会いたくなんか・・・!」
「じゃーな。姫さん」
終始余裕の笑をみせ、龍威は紅葉に背中をむけると右手をあげて城へと向かった。
な、なんなのあの男。
「紅葉?」
急に自身の名前を呼ばれ刀をそちらにむける。
「お、俺だよ」
「なんだ、赤月か」
見慣れた顔にホッと胸をなでおろし刀を鞘に納める。
転がる人間の亡骸を見渡し赤月は不思議そうに「こいつら、ここにいたのか?」と尋ねた。
「あぁ。あたしたち鬼を退治にでもしてきたのかな」
あいつは・・・龍威は・・・
赤月にいうべきか・・・?
「どうかしたか、紅葉?」
「・・・いや、なんでもない」
人間を殺り逃がした、なんて知れ渡ったら笑い者だ。
「赤月、このイノシシはこんでよ。あたしお腹すいた」
亡骸となった人間が狩ったイノシシを目線でしめし、
山の奥へと足を進める。
「へいへい」
イノシシを右肩に担ぎ後を追う赤月。