鬼姫と恋の唄(仮)




寝床にしている洞穴で赤月と向き合い、イノシシの肉を頬張る。



「それにしても赤月。あんたは何で人間を食べないの?」


「そりゃオメ―もだろ」



ゴクッと肉を飲み込んでジト目で赤月を睨む紅葉。


「あたしは赤子のころから父様に人間の肉を口にするなって言われてるの、知ってんでしょ」




そう。それもおかしな話よ。


他の鬼には人間を食えって命ずるくらいなのに。



ま、あたしは人間なんか食べたいなんてこれっぽちも思ったことないけどね。





「そうだったな。俺は鬼の血が汚れる気がしてよ、体がうけつけねぇんだ」


ま、そんなことありゃしねぇんだけどなっと呟き肉を噛み千切る。




たらふく食べてイノシシの骨だけがのこった頃、青風が洞穴にはいってきた。


「兄者、姉上、なにやら城がさわがしいぜ?」



青風の言葉に赤月と顔を見合わせ、城の方を眺めた。


いつにもまして明りが灯っている。




「人間どもの祭りかなんかじゃねえのか?」


赤月は特に不思議にも思わなかったらしく、一つ欠伸をすると「先に寝るぞ」と寝床に戻った。



「青風、あたしも寝るよ」


人間が祭りしてようがあたしには関係ない、そうふんだ紅葉も寝床にもどっていく。



「・・・」


そんな2人をよそに、青風は城を見つめていた。


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