鬼姫と恋の唄(仮)
あたしたち鬼の住処は丑寅の方角にある牛角山。
父様は鬼の総大将であり、鬼のなかでもずばぬけて体がでかい。
牛角山に住む鬼たちはあたしを除いてだいたい5メートルから10メートルの奴らばっかりだが、父様は20メートルはあるだろう。
図体だけじゃない、力も他とは比べようもない。
「紅葉、赤月、青風、帰ったか」
牛角山の奥深くにいる3本の角を持つ黒鬼総大将の前で跪く3人。
「父様、言われた通り村を襲ってきました」
「その返り血を見れば言わずともわかる」
「もうすぐだ」総大将は低い声でボソボソとつぶやきゲラゲラ笑いだした。
完全に自分の世界に入り込んだ総大将に、もう報告することもないだろうと3人はその場を後にした。
「ねぇ。どうして父様は村を襲わせるの?」
最近のことだ。父様が手当たり次第に人里を襲わさせているのは。
「・・・さぁ」
赤月はそれだけ言うと、どこかに行ってしまった。
気づけば青風の姿もなかった。
「・・・ったく」
川にでも行こう。返り血でベタベタして気持ち悪い。