鬼姫と恋の唄(仮)
川岸で着物を脱ぎ水面にうつる自分の姿を見つめる。
ボーっとしているとヒョコッとなにかが紅葉の横にうつった。
「紅葉、女子が裸で何をしておる」
紅葉が右隣へ顔を向けるとそこには狐の耳をはやし、2つの尻尾をもった幼女の姿があった。
狐妖怪の愛七だ。
「水浴びよ、水浴び!」
バシャッと勢いよく川に入る紅葉を一瞥し、目線を紅葉の着物に移した。
「なんじゃお主。着物が返り血で汚れているではないか。わしが洗ってやろう。」
ニコニコしながら着物を川にいれると、丁寧に洗い出した。
相変わらず世話好きね、そう言いながらも嬉しそうに微笑む紅葉。
「それより紅葉、最近お主から一段と血の臭いがする。それに牛角山の鬼共が人里を襲ってまわっていると聞いたが・・・何かあったのか?」
髪を洗う手をピタッと止め愛七に向きなおる。
「あたしも不思議に思ってた。でも、父様の・・・うちの総大将の命令だ」
そしてまた髪を洗う手を動かしだした。
「ほぅ。まっ、わしは人間なんかどうなろうとどうでもいいんじゃがな」
紅葉が居らぬと退屈なのじゃ。そうつけくわえて微笑んだ。
「あたしも・・・人間なんか大嫌いだ」
「ん?何か言ったか?」
ボソッと呟いただけの紅葉の言葉は愛七の耳には届きはしなかった。
「ううん、なんでもない」ニコっと微笑み川岸に腰掛け手拭いで濡れた体をふきはじめた。