鬼姫と恋の唄(仮)
・満月の下で
「ほれ、紅葉。主の着物かわいたぞ」
愛七は綺麗になった紅葉の着物を大事そうに抱えて、紅葉に差し出した。
それをうけとると、さっさと着替え「ありがとう」と一言お礼をそえた。
もう日も暮れてき、あたりは薄暗くなってきていた。
次第にどこからともなく、獣たちの声が山に響き渡りはじめた。
「山が騒がしいのう。何かあったのじゃろうか?」
ピクッと鼻が動いたかと思うと、紅葉は刀をにぎりしめた。
におう。このにおいは・・・人間のにおい。
なんで人間がここに・・・?
「愛七、今夜は住処で大人しくしてるんだよ」
ポンッと頭を撫でると、軽い身のこなしで木に飛び乗り山の下の方目指して次から次へと木を飛び移って行った。
「紅葉!」愛七の静止の言葉も耳にはとどかず、紅葉は足を速めた。
父様たちは気づいているのだろうか。
これは父様の・・・総大将の命令を聞かぬともわかる。
殺せ。きっと総大将はそう命じるだろう。