鬼姫と恋の唄(仮)
ペロッ
手についた返り血を一舐めし、
月を見上げた。
「今日は、満月か・・・」
カチッ
鞘から刀をぬく音が背後から聞こえる。
「誰」
スッと顔だけ後ろに向ける。
「へぇー。あんたがこいつらを殺ったのか」
口角をあげて楽しそうに笑いながら刀を向ける。
こいつらも雇われ兵の類か。
馬鹿な奴らだ。
「・・・何者」
紅葉も刀をぬき目の前の敵であろう人物に刃先をむける。
この男の気配・・・まったく気づかなかった・・・。
「俺は雇われ兵の首領、龍威だ」
相変わらず楽しそうに笑いながら話す男に、紅葉はギロッとにらみを利かせた。
「・・・ふーん。あたしを、殺す?」
紅葉は得意の素早さをいかし、龍威の背後へまわり刀を振りかざした。
が、呆気なく龍威にうけとめられてしまった。
ギリッ
「んな!?」
必死に平然を装っていた紅葉も、これにはさすがに動揺を隠せずにいた。