恋音
「こぉすけぇ…。あたしを、置いていかないで…」

恋をしてはいけないと思いつつも、耕輔と付き合うことを決意したあの日。

あの日に戻れたらいいのに。

耕輔とは付き合わなければ…。

こうはならなかったのに。

耕輔…。

ゴメンなさい。

あたしが弱かったから。

スキってはっきり言えてればよかったの。

ゴメンね…。

先輩はずっと隣にいてくれた。

ずっと涙が止まらないあたしをなだめてくれた。

でも、あたしは知ってたよ。

先輩も泣いてたこと。

あたしに聞かれてないと思ってたんだろうけど。

小声で、言ってたから。

「耕輔。ゴメンな…。ゴメン。耕輔の分まで、さやかのこと愛すから…。俺のせいで…ゴメン………」

って。

先輩のせいじゃない。

弱いあたしのせいだ。

大切な人を、初めてこの世から失った日だった。
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