野球観戦&セクシー・リップ
挨拶がきちんとできるし、私が間違いを指摘すると、
「申し訳ありません」と素直に頭を下げる人だったから。
でも、隆太が私に謝っていたのは、ひと月ぐらいまでだった。
仕事の飲み込みの早い隆太は、配送だけじゃなく、在庫チェックや発注も任されるようになった。
病院側の在庫管理は私の仕事だから、私達は話す機会が増え、私語もちょこちょこ交わすようになった。
雑談の中で、隆太に恋人がいないのは、薄々気付いていた。
でも、私なんかサエない容姿だし、気が利くタイプでもない。
女として見てくれるわけないから淡々と接していた。
…そして、半年経った頃。
『良かったら、お付き合いしませんか?』
納品が終わった後、ストレートに隆太に言われた。
『渡瀬くん、4歳も年下じゃない』
白衣を着た私が、バーコードリーダー片手にびっくりしていると、彼は、
『俺、年上の谷口さんが好きなんです』
と涼しい目して言ったっけ…
「はい、おつまみ!」
一年半前の記憶に想いを馳せていた私は、隆太の声で、はっと我に返った。