野球観戦&セクシー・リップ


挨拶がきちんとできるし、私が間違いを指摘すると、
「申し訳ありません」と素直に頭を下げる人だったから。


でも、隆太が私に謝っていたのは、ひと月ぐらいまでだった。


仕事の飲み込みの早い隆太は、配送だけじゃなく、在庫チェックや発注も任されるようになった。


病院側の在庫管理は私の仕事だから、私達は話す機会が増え、私語もちょこちょこ交わすようになった。


雑談の中で、隆太に恋人がいないのは、薄々気付いていた。


でも、私なんかサエない容姿だし、気が利くタイプでもない。

女として見てくれるわけないから淡々と接していた。



…そして、半年経った頃。


『良かったら、お付き合いしませんか?』


納品が終わった後、ストレートに隆太に言われた。


『渡瀬くん、4歳も年下じゃない』


白衣を着た私が、バーコードリーダー片手にびっくりしていると、彼は、


『俺、年上の谷口さんが好きなんです』

と涼しい目して言ったっけ…







「はい、おつまみ!」


一年半前の記憶に想いを馳せていた私は、隆太の声で、はっと我に返った。






< 7 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop