青い残光【完】
「…おっしー、久しぶり。俺のこと、覚えててくれたんだね」
「………はい。」
わたしは、あなたを忘れた日なんて…一度もなかった。
だけれど…きっとあなたにとって、わたしは過去の存在なのだろう…。
あなたの「今」に、わたしはいない。
そんなわたしの心を知らず、彼は嬉しそうにはにかんだ。
「俺、社会人リーグで頑張って、このチームに声かけてもらってやっとプロになれた。…嬉しいよ。」
そんなこと、知ってる。
わたしがあなたの情報を得ようと毎日所属チームのホームページを見ていたことを、あなたは知らない。
本当は、今日までのあなたがどれだけ苦労しているのかも知ってる。
だけれど……。
「……そうだったんですか……良かったですね、おめでとうございます」
わたしが微笑むと、彼も照れ臭そうにはにかむ。
知らないフリをするのが、一番良いと思った。
彼は、誰にでも弱みを見せるような人間じゃないと…分かっていたから。
わたしから言うのはやめた。