青い残光【完】
わたしは持ってきたペンと、真っ白な色紙を彼に差し出した。
彼は、キョトンとした顔でわたしを見つめたけれど…その意味は次第に分かったようだ。
「梅田選手…サイン、お願いします。」
きっと…その言葉を、そのやり取りを、彼はずっと望んできたんだろう。
「……はい。」
彼は、喜びを噛みしめるようにペンと色紙を受け取った。
サインを書くのは初めてではないのだろう、迷いなくサラサラとペンが色紙の上を走る。
彼の名前を少し崩して書いたような……彼のサイン。
その横には彼の背番号「30」が添えられた。
ペンの動きが止まったのを見て、わたしはお礼を言って色紙を受け取ろうとした。
だけれど、彼の視線は色紙から離れない。
「………?」
彼は少し考えるようにした後……もう一度ペンを色紙に走らせた。
そして彼は恥ずかしそうに目をそらして、色紙をわたしへと手渡した。
「………!」
わたしは、驚きに息を飲んだ。
色紙には、彼のサインと……「おっしーへ」と書かれた宛名、今日の日付が入っていた。
バッと顔を上げ彼を見ると、彼はふにゃりと笑った。