青い残光【完】
「宛名書いたから、転売しないでよ」
そう言うと、彼はいたずらめいて笑った。
「し…っ!しません!!」
そう返すと、お互いに笑いあった。
こんなことは、高校生の頃ぶりで懐かしくなった。
「……ありがとうございました。」
「どういたしまして。」
ぺこりとお辞儀をすると、彼はその場を立ち去ろうとした。
わたしはそれを見て、じわりと焦りが生まれた。
「梅さんっ」
とっさに、呼び止めてしまったのは本当に無意識だった。
そして、わたしは必死だったのだと思う。
「……?」
彼の、不思議そうな顔を見るのも久しぶりだな…と思った。
あの頃に戻ったような気持ちになる。
だけれど、声をかけたものの何も考えていなかったわたしは、話題を提供するために頭をフル稼働させた。
「あ……あの…、えーと…あっ、そうだ!ユ、ユニフォーム!」
「ユニフォーム?」
「わたし、梅さんのユニフォームを買います!だから……次はユニフォームにサインしてくださいね!」
とっさに思いついた話題だったけれど、彼は嬉しそうに微笑み頷いた。
そして彼は車を買ったらしく、黒いカッコ良い車へと乗り込んでいった。
車は間も無く発車し、わたしはその姿が見えなくなるまで見つめた。
見えなくなるまで。