青い残光【完】
「あ、あの……わたし、梅さんのユニフォーム買いましたよ!」
「えっ?」
彼はとても驚いた顔をしている。
初耳です、みたいな顔。
この間わたしが言ったことを忘れているのか…本気だと思われていなかったのかは分からない。
少し、悲しいと思ったけれど……そんなに悲しくはなかった。
だって、そんな予感はしていた。
彼は、じっとわたしのユニフォームを見つめた。
いつも試合で着てるユニフォームなのに……きっと嬉しいんだろうな。
「おっしー…ありがとう。」
目を細め、はにかんだように微笑む彼は嬉しそうだ。
わたしは、その表情が見れたことに満足した。
そして、彼に黒のマジックを手渡した。
「ユニフォームに…サインお願いします。大っきく書いてくださいね」
わたしがそうお願いすると、彼は静かに頷いた。
彼とわたしでユニフォームを引っ張り、たるみのない状態にしてから彼はサインを書き出した。
ノートや色紙と違う書き心地に、最初は困惑していた。
だけれど間も無く、真っ青なユニフォームに、黒のマジックが交わった。
背番号30の上に、彼のサインが重なっていくのをわたしは見つめた。