青い残光【完】









「あ、あの……わたし、梅さんのユニフォーム買いましたよ!」







「えっ?」









彼はとても驚いた顔をしている。
初耳です、みたいな顔。



この間わたしが言ったことを忘れているのか…本気だと思われていなかったのかは分からない。









少し、悲しいと思ったけれど……そんなに悲しくはなかった。


だって、そんな予感はしていた。











彼は、じっとわたしのユニフォームを見つめた。
いつも試合で着てるユニフォームなのに……きっと嬉しいんだろうな。






「おっしー…ありがとう。」








目を細め、はにかんだように微笑む彼は嬉しそうだ。
わたしは、その表情が見れたことに満足した。







そして、彼に黒のマジックを手渡した。








「ユニフォームに…サインお願いします。大っきく書いてくださいね」








わたしがそうお願いすると、彼は静かに頷いた。





彼とわたしでユニフォームを引っ張り、たるみのない状態にしてから彼はサインを書き出した。


ノートや色紙と違う書き心地に、最初は困惑していた。








だけれど間も無く、真っ青なユニフォームに、黒のマジックが交わった。


背番号30の上に、彼のサインが重なっていくのをわたしは見つめた。
















< 111 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop