青い残光【完】
それから、わたしは夏休みを使って2度九州まで彼の試合を見に行った。
飛行機は苦手だけれど、彼のためだと思えばワクワクした高揚感の方が勝って耐えられた。
慣れない土地に迷いながら、何とかスタジアムまで到着した。
地元の人は優しく、わたしが遠方からの旅行者だと分かると懇切丁寧に教えてくれた。
結局、わたしが見に行った2試合とも彼の出場機会はなかった。
どちらもベンチには入っていたけれど…交代選手として起用されることはなかった。
まずスタメンじゃないと知り、わたしは落ち込んだ。
スタメンには、初めて名前を聞く選手が名を連ねた。
試合中、わたしは控えの選手がベンチの端でアップを行っているのを試合そっちのけでずっと見ていた。
遠すぎて顔は見えなくても、見た体型や走り方だけで、久しぶりでもすぐに彼を見つけられた。
それがとても嬉しかった。
いつ交代で出場するのかと胸をときめかせていたわたしは、交代できる3人のカードを全部使い切ったところで落胆した。
そこから先はもはや、試合内容なんて関係なかった。
わたしは「彼」を見に来たのに、彼を見られるチャンスはなかったのだから。
だけれど、試合に勝った時のチームメイトとの喜びのハイタッチの笑顔は、あの時と全く変わっていなかった。
くしゃりと笑った子どものようなその顔は、わたしに変わらないときめきを与えた。
……来て良かった。
彼の一瞬の笑顔のために移動費が数万円…。
そう思うと切なかったけれど、翌日は観光して帰った。
どちらの試合も、そんな感じだった。