青い残光【完】
目的は練習後のファンサービスの時間なんだけれど…久しぶりにゆっくりと彼を見つめる時間が欲しかったから練習中の時間にやってきた。
高い水色のフェンス越しに、彼を探す。
みんな同じウェアを着ているけれど、わたしには彼が分かる。
走り方やボールの蹴り方などは、よく見ていると人によってちょっとした違いがある。
彼のことをずっと見ていたわたしが、見間違えるわけがない。
得意げになりながら、ボールの往来を目で追い続ける。
よくよく考えると、サッカーの練習をしている様を見つめるのはかなり久しぶりだった。
いっぱいいっぱいだった高校生の頃がとても懐かしい。
あの頃はサッカーなんて何も分からなかったのに……
サッカーが分かるようになれば彼にもっと近付けると思ったあの日のわたし。
だけど、違った。
彼はこんなにも近くて……こんなにも遠い。
それはフェンスみたいに…薄いようで確実に遮る壁のように。
近くまでは行けても、本当に近づけたことなんて一度もない。
「………………」
わたしはそのまま、ずっとグラウンドを見つめ続けた。