チョコビスケット
「燈那?!どうしたの?!」
後ろから聞こえてくる理子ちゃんの声に返事もする
余裕がなくてただひたすらトイレを目指して走る。
違うのに...!!
「うっ....」
ガタンっと勢いに任せてトイレのドアを閉めて鍵を掛ける。
苦しくて溢れてくる涙と一緒に出てくるものは、何も入っていない空っぽの胃の中の胃液。
似ている人を見るだけでこんなことになるということは、今もまだあの人から離れられていないということ。
『...俺だけの燈那...好きだよ』
やだ、やだ....もう、止めて!!!
何度そんな言葉を投げかけたかなんて覚えていない。
記憶に新しいそれは、あたしを縛り付ける。
「...燈那?」
背後の扉越しに、理子ちゃんの小さな声が聞こえた。
そういえば、追いかけてくれてたんだ。
「っ....」
だけど、まだ収まらない吐き気にその扉を開けることが出来ないでいると、返事を返していないのにも関わらずまた言葉を掛けてくれた。
「私、お水もってくるから!待ってて!」
パタパタとここを立ち去る足音。
もう授業が始まっちゃうのに...。