人形探し
絵麻は昔から一緒にいる幼なじみだった。


ほとんどいつも一緒に行動していて、亜矢達のグループに入る時だって一緒だった。



だから、いじめられてることに気付いてあげられなかった。


そんな自分が、情けない。




「あたし達の前に、あんな形で出たり消えたりするってことは、絵麻はもう死んでるのかな?」

「で、でも、出るなら私達の前だけで良いじゃん。なんでクラスメイト全員の前に?」

「亜矢に逆らえない人が、一緒になっていじめてたから」


その声は、夏帆の声じゃなかった。

低い、男子の声。



「ちょ、ちょっと、春樹!?」

「よっ!」


扉に目を向けてみると、私の幼なじみの春樹が、ちょうど部屋の扉を開けて入ってきたところだった。


私と絵麻と春樹は、昔から仲が良かった。


たった3人の幼なじみで、よく遊んだりもした。



「もー! 驚かせないでよ!」

「悪ぃ。話が聞こえたもんだから」



春樹は当たり前のように、私の学習机の椅子に腰掛けた。


さっき言ったことに、さらに付け足すようにして


「いじめてないとしても、見て見ぬふりをしてた」

「春樹、あんた何でそのこと…」


夏帆の反応からして、春樹は絵麻のいじめを知らないと思っていたらしい。


確かにそうだ。春樹が知ってたら、絶対に止めてたはず。




「三枝に相談されたから」

「風香に?」

「そう。三枝はいじめたくないけど、亜矢が怖いってさ」



玲美、お茶。春樹にそう言われた私は、春樹を睨むようにして視線を向けてから、お茶を淹れに立った。
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