ラスト・プレゼント(さようなら と、愛してる。)
―…
『真っ白で綺麗だから…
″蛹″なんて どう、かなぁ?
ほら、これで さ・な・ぎ』
″彼女″が そう言いながら、紙に字を書いて見せると、
貴方は、怪訝そうな顔で″私″と″彼女″を、交互に見た。
「…サナギー?
真っ白って とこに重点 置くなら、
せめて″まゆ″とかさぁ…。
いくら何でも、″蛹″じゃ可哀想だって 笑」
『そうかなぁ?
でも何か、この子が″蛹が いい″って…
言ってる気が するんだよね~…』
そう言って、″彼女″が″私″の顔を覗き込む。
「そうなの?
お前…、
ホントに蛹って名前が いいのかー?」
まだ疑わしそうな表情で、
でも笑いながら、貴方も″私″の顔を覗き込んだ。
『……ほら!!
見た!?
今、″うん″って!!』
「えー…?笑」
貴方は、音は聴こえなくても、
″彼女″の言葉は、全部 分かる。
表情と、口の動きと…
あと、″彼女″の言いそうな事が、全部 分かっちゃうんだ と、思う。
だから″彼女″も、名前とか『漢字』を説明する時は紙を使うけど、
他は殆ど、使わない。
だから…家の中には、
″彼女″の鈴を振るような声と、貴方の声が いつも聴こえていて…
それが とても、落ち着く。
″彼女″が居なくなって、
バランスが崩れてしまった。
家は まるで、ヒカリを1つ失ってしまった ようで…、
大好きな貴方と″彼女″が楽しそうに話してる、
あの空間に居るのが、すごく幸せ だったのに。