ラスト・プレゼント(さようなら と、愛してる。)
時計の針が12時を指した。
深夜は、風が肌を刺すように冷たい。
貴方が窓の外を見ながら、小さく呟いた。
「…寒い」
次に″私″を見て、一言。
「今日も寒いね~…。
″蛹″、大丈夫?」
″私″は答えられないから、無言で貴方の側へ行く。
足元に すり寄って見上げると、優しく頭を撫でてくれた。
「…雪、降るかなぁ?」
貴方は、寒いのは嫌いだけど、雪は好きみたい。
また窓の外を眺める その表情は少しも嫌そうでは なく、
雪が降るのを期待しているように、見えた。
貴方は機嫌が いいと、時々 鼻歌を歌う。
砂のように さらさら してて、
でも月の光のように実態が なくて、
儚いけど とても優しい、貴方の声。
そんな声で歌う、少し掠れた貴方の鼻歌が″私″は大好きで、
雪が降ったら、また それが聴けるかな と、淡く期待してみる。