ラスト・プレゼント(さようなら と、愛してる。)




『それに しても、

どうして、″彼女″が声が出ない って……?』




『ほら、お礼を しようと思って ご飯を勧めた じゃない?


その時に頑なに遠慮されてた けど、

首を ぶんぶん振るだけ だったから、ちょっと不思議に思ったの。


…そしたら それが表情に出てしまった みたいで…、

ご自分から教えてくれたのよ。


書く物を持って いなかったから、

携帯の画面に文字を入れて見せてくれたの…"私は声が出ないので喋れません"って。


"もう何年も話して いない"って…』






『そう、だったの……』






―………何年も話して いない……?―




…そんな筈は……。






″私″は確かに、出会った時から″彼女″の声を聴いていた筈なのに……、

それが全て否定されて しまった。




でも…、

貴方は耳が聴こえなかったから、

貴方が″彼女″の声を聴いた事が ないのは当たり前で、

それが″彼女″の声が出ない という証拠には、ならない けれど…


おばさんは、普通に話も出来るし、耳も聴こえてるんだから、

おばさんが、″彼女″の声が出ない と言うのには、信憑性がある。




それに信憑性 云々の前に根本的な問題として、

″彼女″が おばさんに対して わざわざ"声が出ない"なんて嘘を吐く意味が無いし…。


…100歩 譲って、どうしても おばさんの誘いを断りたかったから だと しても、

″彼女″は そんな嘘を吐いて断るような人じゃ、ない。






やっぱり……、

本当のこと、…なんだ…。





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