仕事しなさい!
こんな言葉遊び反則だ。

危険な手と唇。
心を揺さぶる戯れ言。


「もう、許して。須賀くん……」


「名前で呼んでください。そしたら、許してあげる」


「……渡、お願い」


須賀くんがもう一度、私の唇に口付けた。
それからにっこり笑った。


「よくできました。今日は許してあげます」


私は彼の腕の中、荒い呼吸をしながら抱き締められていた。
抱擁もキスもたまらなく気持ち良くて、
私こそ、このまま流されてしまいそうで、
怖かった。


蜘蛛に捕まった蝶を思い出す。
足掻けば足掻くほど、糸に絡めとられ逃げられない。
やがて、逃げる気すら失い補食される時、きっと私は歓喜を持って彼を受け入れてしまう。

こんな関係よくない。

良くないのに。

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