仕事しなさい!
少し前にも、こうして私を見つめてきた男がいた。

必死に気を引こうと、強引に接近してきたあいつは、
やっぱり少年みたいに無邪気だった。
私を見つめるひたむきな瞳。
2ヶ月、私の傍にいた男。


胸の中にはまだ怒りとも悲しみともつかない感情が渦巻いている。
振り回すだけ振り回して、嘘がバレたら今更「好きです」だなんて。
むしがよすぎる。

だけど、まだ消えていかない。
彼の瞳もキスも温もりも。
私をとらえて離さない。


「りんちゃん」


ハッとたち戻ると、海士が私を見上げていた。


「シャケのおにぎり食べないの?かいじ食べたよ?」


「ごめんね。ぼーっとしてた。食べるよ」


私は海士の手からおにぎりを受け取った。

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