仕事しなさい!
お弁当済ませ、眠そうな海士と家に戻る。
私用に準備してあった布団を敷いて、海士を寝かせる。
添い寝したら、コテンと寝てしまった。
まだ、本調子じゃないのかな。


「おう、倫子」


料理屋の厨房スペースから兄が出てきた。


「お兄ちゃん、お邪魔してます。急にごめん」


「なんだ、元気そうだな。俺はてっきり具合が悪いのかと思ってた」


「ただの有給消化だよ。無くなるからまとめて取れって総務に言われたの」


でまかせを言う。
兄が手を口元に持っていく。誰もいないのに、内緒話をするみたいに手で影を作る。


「もしかして、彼氏と破局したか?傷心旅行か?」


「違いますぅ」


私はさくっと否定しながら、内心「近い」と思っていた。
傷心旅行。

形としてはそうなるのかな。

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