仕事しなさい!
ふと、会社を辞める構想が浮かぶ。

西村くんは待ってると言ってくれたけど、あんな風に物笑いの種にされて、戻る必要があるのかな。

賭けに関わった面子はこれからも仕事で関わり続けなければならない。
何より、須賀渡の存在が痛すぎる。
彼の姿を目にする以上、この痛みは楽にはならない気がする。


でも、将来のことを考えると容易に辞めることはできない。
ひとりで生きていくなら、尚更だ。


甲府の工場への異動はできるだろうか?
もしくは埼玉の戸田にある物流センター。
いっそ、大阪支社でもいい。

異動が叶えば、私の心と生活は楽になる。
戻ったら、課長に相談してみよう。



「倫子さん」


その声は背後から聞こえた。

海沿いの道をぶらりと歩いていた私は、あり得ない声に恐怖を感じた。
嘘でしょ?
なんで、いるの?

背筋を寒くしながら、振り向くと、そこに須賀渡がいた。



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