仕事しなさい!
空虚
1
約1週間を海辺の町で過ごし、私は東京に戻ってきた。
いつまでも休んでいるわけにもいかない。
大人なんだから。
自分に言い聞かせ、電車に乗る。
東京の街の喧騒は耳が痛くなるほどで、海辺で落ち着いていた私の気持ちをかき乱した。
それと同時に無関心な目をした人の群れに安心感を覚えたのも確かだ。
私が戻ってきた日常は、以前のものだとわかった。
須賀渡のいない世界だ。
翌月曜、私は久しぶりに出社した。
「も~!安斉さんがいないとホント大変だったよ~」
白木さんが子どものように地団駄を踏んで言う。
本当の事情を知るはずもないのに、私が珍しく長期休暇を取ったからと心配してくれたようだ。
50代のガタイの良いオジサマのする地団駄はちょっと可愛らしかった。