仕事しなさい!

須賀くんの名前に私は固まる。


「安斉としてはさ、須賀と……その……付き合ってるって認識だったの?」


原くんの言葉は遠慮がちだった。

からかわれていることを勘違いしていたとしたら、哀れだと思ったのだろう。
私はようやく、ふっと笑うことができた。

作り笑いだったけれど。


「正直、付きまとわれて困ってたの。だから、賭けだったって知って安心した」


強がりに響かないように細心の注意をはらう。


「そっか、そうだよな。本当にごめんな」


原くんは安堵したように頷き、企画営業課のある3階に帰って行った。



私はひとり。
自販機スペースから空を眺める。
6月の空は青い。
今年は空梅雨らしい。

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