仕事しなさい!
ふと、この路地で4年前、須賀くんを介抱したことを思い出した。


路地でうずくまる新人を、誰も助けにいかない様子だったので、声をかけた。

吐ききるまで背中を擦り、ぐったりとした彼に肩を貸しながら、タクシーを拾った。
私の足腰の強さも去ることながら、須賀くんもまだ細っこい若者で軽かったのを覚えている。

『すいません、ホントすいません』

車中でも私の肩にもたれ、謝罪を繰り返す須賀くん。
私は言ったっけ。

『大人なんだから、飲めない時は断らなきゃダメだよ』



言われなければ、絶対に思い出さなかった些細な出来事。
彼を恋に駆り立てた出来事。


ほら、須賀くん。
たいしたことしてないのに、駄目じゃん。
私みたいなのに興味持っちゃって。

お陰で私、今こんなにしんどいよ。
< 194 / 238 >

この作品をシェア

pagetop