仕事しなさい!
涙がこぼれた。

あの海辺の町で全部流しきってきたはずなのに。

自分で決着つけたのに。

涙が勝手に流れてくるんだ。


「具合、悪いんですか?」


背中にかけられた声。
私は聞きたかったその声に反射的に振り向いてしまった。

須賀くんがひとり、暗い路地の入り口に立っていた。
背中に繁華街の光を背負い、表情は逆行で見えない。

泣き顔を見られてしまった。

私は弱味を隠すように、キッと彼を見据える。


「大丈夫だから、ほっといてくれる?」


「泣いてるのに?」


「きみには関係ないことだから、気にせずもう行って」

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